吉野ヶ里の家
佐賀県吉野ヶ里町
佐賀県を中心に「無添加住宅の家づくり」をしておられる株式会社プレースホームさんから御依頼戴いたモデルハウスです。子育てを終えた夫婦二人の為の平屋の住まいという設定でした。敷地の西には弥生時代の遺跡が発掘された吉野ヶ里歴史公園があり、南一面には水田が広がり、北側には縄文時代に狩りをしていたであろう背振山地の山々が連なっています。
風土と共に建ち、ゆったりと静かに流れゆく自然の移ろいを家のどこにいても感じられるような、穏やかな時間を大切に過ごす家を考えました。
南側のファサードは、前面の水田と呼応するように、軒の水平ラインを強調し、ソーラーパネルを真一文字に26メートルの長さで載せています。
外観には、吉野ヶ里の風土に溶け込むような色を選択しました。
主な外壁の仕上げは、赤茶色の甘木土塗りと杉板張りで、一部ブルーのタイルを使用しています。
暖かみのある赤茶色は、吉野ケ里遺跡から出土する弥生式土器の色であり、古来から吉野ヶ里の土地にある赤土の色です。
鮮やかなブルーは、有田焼の絵付けに使われる顔料をイメージした色です。
使い勝手や動線を重視したとてもシンプルな平面計画としました。LDKと和室、家事コーナー、廊下は、ひとつながりの空間としながら、造作家具の配置の仕方や小さなロフトを設えたり、視線の流れを工夫したりすることによって、インテリアに変化と奥行を生み出すことを意図しました。
壁、天井は漆喰仕上げで、柱や梁、家具等は杉や檜、楢等のクリアのオイル仕上げとし、それぞれの木の表情と質感を感じられるようになっています。
東側の建物に入り込んだデッキ(空の見える部屋)は玄関、LDK、寝室に面しており、それぞれの部屋に外光を取り込んでいます。各部屋の窓は高さ、形を変えて視線を外しながらも、デッキに植えられた小さな樹木はすべての部屋から楽しめる様になっています。
リビングと和室の境の障子は、右半分は壁の前に引くことが出来、左半分は壁の中に引込むことが出来る様になっています。
間口いっぱいに障子を開け放つことができるので、LDKと空間を一体に繋げることができます。
床柱と落し掛けは、元々は1本だった神代杉を切り分けて使いました。長い年月の中で生まれた独特の灰色がかった色が美しい材料です。(神代杉とは火山灰の中に埋もれていた杉の巨木です。)
キッチン横に奥様の家事コーナーを設えました。
建物のほぼ真ん中に位置しているので、家中の空気と外の自然を感じながら家事や趣味に勤しむことができます。
吹抜けの天井を3.8mと高くし、トップライトを設けました。
建物の中心部にも光を入れることによって、全体的に明るく広がりを感じる空間になっています。
寝室の南側には、デッキがあり、デッキの中に小さな庭があります。
ベッドに横たわると、地窓から苔や下草を垣間見ることができ、高窓からは樹木越しに空の表情がよく見えます。
吉野ヶ里の家 所在地:佐賀県吉野ヶ里町
構造・工法:木造 敷地面積:538m² 建築面積:204m² 延床面積:178m² 竣工:平成26年
青色タイル
有田焼の呉須をイメージした2種類の青色のタイルを使いました。いくつものタイルを取り寄せ、貼り方のパターンも数多く検討しました。
御施主様と打合せを重ね、最終的には、鍋島様式の有田焼茶碗に描かれていた櫛歯文をイメージしたものに決まりました。
土壁
弥生土器の赤みを帯びた柔らかい色合いを再現できる土として、福岡県朝倉市の甘木で採れる土を使用しました。
表面にあえてひび割れをさせる仕上げは、均一に割れを入れることが難しいのですが、職人さんの技が自然素材の持つ力を引き出してくださり見事に仕上がっています。
この土壁に合う玄関扉を検討し、オークのチョウナ仕上げとしました。
鳥小屋
日々の生活の様々なシーンの中に、自然との繋がりを感じられることを大切にして設計を行いました。
実際に住まわれることに成ったご主人は、家の庭先に訪れる小鳥によく声をかけ話をされる方でした。
それで工事の最中に、動物も立ち寄るようなのどかな家になるようにと願いを込めて、外壁に鳥小屋を設置する事に成ったのでした。
障子のデザイン
様々な開口に障子を使っています。
障子の組子の入れ方や、紙の貼り方は、それぞれの部屋に合わせて、1枚1枚設計しました。
部屋によって異なる様々な種類の障子を楽しむことができます。
和紙は、300年以上の伝統を持つ肥前名尾和紙(佐賀県重要無形文化財指定)です。
壁と同面に納まる扉
寝室の扉は開いた時に側面の壁と同一面に納まり一体になる様に設計しました。
来客が無く夫婦2人きりのときは、寝室の扉を開 け放しておくことが想定されたので、廊下からの視線の先に建具を見せずに壁の中にピタリと納めた方が綺麗だと考えたからです。